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スタイルに合ったライフルスコープを選ぶ。

ドットサイトやオープンサイトも使いやすい光学機器です。が、今回のブログテーマは自分のスタイルに合ったライフルスコープを選ぶ。(過去には、目的に合ったライフルスコープを選択するには。という記事もございますのでご参考までに。)

 

狩猟業界に初めて足を踏み入れ、右も左も分からない頃、大口径56㎜対物レンズ、ズーム式の高倍率スコープに憧れたものです。仕事柄、色々な国のハンターと話しをする機会にも恵まれ、その年の流行スペックに対する感度も徐々に培われてくるのですが、低倍率スコープの魅力を知り始めたのは少し時間が経ってからでした。

 

【対物レンズ径】

ライフルスコープには、いくつかの一般的なレンズ径があります。56㎜、50㎜、42㎜、24㎜の4種類です。もちろん、この他にも市場には45㎜、30㎜といった対物径を持つスコープも流通していますが、今回は前述の4種に絞っておくことにします。

 

【低倍率スコープ】

照星と照門だけで狩猟に臨むハンターの方々もいらっしゃいますが、ここでは、スコープを使うと有効な場面を幾つかみていきます。

 

低倍率スコープの魅力は視野の広さ(FOVという表現が用いられます)。デュープレックスやG4といった狩猟向けのレチクルに加え、BDCを意識したタクティカルなレチクルも多く、購入に際しては、更に第1焦点面(FFP)や第2焦点面(SFP)から選択することができます。

 

但し、SFP、特にFFPの場合、ご自身の使用頻度が最も高い倍率時におけるレチクルの見やすさを見ておくことと、イルミ輝度の確認をお勧めします。

 

【高倍率スコープ】

やはり高倍率スコープは魅力的です。但し、ダウンサイドとしては視野の狭さと重量です。これらスコープの低倍率域は、一般的には2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍程度からスタートし、4倍比、6倍比、8倍比、最近では10倍比で最大倍率60倍~80倍辺りまで用意されています。ライフルスコープの性格上、構造的な制限の範囲で高倍率を目指せば目指すほど視野は狭くなり、明るさが失われ暗い見え味になりがちなのですが、先日のIWA2023で拝見したMarch 8-80x56 High Master は例外でした。

 

主たる射撃ターゲットが静的の場合、高倍率スコープの方がクリアに見える為、実用的と感じるはずです。パララックス補正機能は標準で搭載されています。

 

【オールラウンド】

狩猟用スコープとして、オールラウンドという欲張りなライフルスコープがあります。これらは、例えば1.5‐6x42、1.5-9x42などをはじめ、低倍率域と高倍率域をバランス良く組み合わせつつ、軽量で、サイドフォーカスを排して仕様の割に価格が少し抑えられているタイプのスコープ群です。

 

チューブ径は細いですが、1インチの4-16x44というのも分類的にはオールラウンドです。但し、10倍を超える倍率を持つスコープにはパララックス補正機能が標準装備されているため、射撃距離に応じて対物レンズ側のフォーカスを合わせることが出来ます。

 

【光学設計】

人間のひとみ径は日中と暗所では異なる。というテーマについて過去ブログで触れました。ライフルスコープというのは、この辺りを強く意識しつつ光学設計されています。

 

加えて、レンズを介して捉えるターゲットを高倍率化させると、像が暗くなってしまいます(*本線から脱線しますが、顕微鏡にはプレパラートを下方から照らす光源が備わっている為、高倍率でも明るく見えますが、ライフルスコープでは同じようにはいきません)。

 

そこで、最終的な製品として大きな差が現れるのは、光学設計と、高次元の競争で培われ続けるレンズやコーティングを取巻く互いに密接する独自の技術と、今日に至るまでに積み上げた企業としての引出しの多さです。

 

【倍率比】

ライフルスコープでありながら、裸眼に近い感覚で覗くことが出来る低倍率スコープ、動く標的を瞬時に視認できる広い視野角、人気の火付け役となったスペックが、1‐4x24というズーム式の変倍スコープでした。4倍を倍率設計の基準としているため、4倍比スコープと呼ばれます。

 

その後、1‐6x24、1‐8‐24、ついには1‐10x24というスペックを搭載したスコープが市場に現れるところまで、現在の光学系進化は進んでいます。それぞれ6倍比、8倍比、10倍比と呼ばれます。

 

【倍率1倍とは】

ライフルスコープを取り扱う各メーカー、あるいはスコープブランドでは、製品ポートフォリオに必ずといって言いほど低倍率域1倍のスコープが用意されています。

 

但し、この倍率1倍というのが難しく、実際に覗いてみると、各社が謳う ❝1倍❞ というのはそれぞれ微妙に異なります。

 

1倍と言っても決して裸眼と同じではなく、倍率が掛かっています。それゆえ、裸眼に近い倍率で両目を開けた状態で獲物を視認した状態から、スコープの接眼レンズを覗き込んだ際に、獲物との距離感に違和感を感じさせない見え具合が理想とされますが、それを高い次元で製品化できているスコープは多くありません。そこで強さを発揮するのが技術的な引出しの数です。

 

【落としどころ】

アイレリーフアイボックス、レンズコーティング、周辺解像度など、ご自身で実際にスコープを覗き込んだ際に、ストレス(*暗い、焦点がぼやける、アイポイントがズレると直ぐにケラレる、言い換えると真っ暗になる)が許容できる範囲内の製品でありながら、ご予算の範囲以内という、少し難しいお買い物になります。

 

【まとめ】

ライフルスコープは低倍率、高倍率、オールラウンドなど、それぞれの狩猟スタイル(ロングレンジ、ハイシート、巻狩り、忍び猟等)に合った製品が用意されていますので、新たに1本を導入の際は、経験豊富な銃砲店様へ伺ってみると適切なアドバイスをいただけるかもしれません。

 

ライフルスコープは一見難しそうですが、理解が進むと本当に面白い光学機器です。今回もここまでBlogにお付き合いをいただき、ありがとうございました。

 

InstagramSNSにて情報発信もしておりますのでよろしくお願い申し上げます。

 

【距離計を内蔵したドットサイト】

こんな光学機器もあります。

狩猟における実際のフィールドでは、標的までの距離を知っているか否かで、得られる結果に大きな違いが現れます。

 

DoRaSight(ドラサイト)は、レンジファインダー内蔵型のドットサイトです。つまり、ドットサイトの赤点を覗きながら、視点の移動で標的までの距離が判る。測定可能な最大距離は800メートル