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狩猟用の双眼鏡といえば8x56。ハチゴーロクと呼びます。

久しぶりの狩猟用 8x56双眼鏡です。

ハチゴーロクのハチは倍率8x、ゴーロクは対物レンズ径56㎜という意味です。その昔、ライフルスコープの主流はズーム式ではなく固定倍率でした。ライフルスコープも8x56、双眼鏡も8x56。当時、獲物のスカウティング双眼鏡と猟銃のスコープを覗き込みレチクル越しに捉えるターゲットが明るく大きく、そして同一サイズに見えるという点にドイツ人ハンターがメリットを見出したことには合点がいきます。

 

ドイツ或いは欧州のライフルスコープ市場には固定倍率でRifle scope 8x56というニッチなハンティングスコープカテゴリーが今もなお存在します。そうは言っても、ライフルスコープのズーム機構が自動車のATまたはMAのように今では製品に標準化されているため、8x56スコープにこだわるユーザーはやはり少数派です。一方、双眼鏡の8x56はどうかと言うと、いまだにハンター専用ギアの一つとして欧州のハンティング向け光学製品メーカーから当たり前のように準備されているわけですが、今回、その理由を図とあわせてBlogにまとめてみました。

 

日本国内ではあまり流通しておりませんが、ドイツ人ハンターで、ハチゴーロクを知らない人はいません。ビクセンでもForesta II ED8x56(独テストレポートはこちら)はドイツ市場にて販売されています。プリズムにはアッベケーニッヒ型が用いられており、重量は1000グラムを超えますが、双眼鏡としては明るく見える光学設計が採用されているモデルです。古くから独狩猟市場に存在するハチゴーロクですが、その進化は止まっていません。レンジファインダー内蔵の8x56モデルも市場投入されています。これらRF仕様の8x56は、Leica、Zeiss、などのハイブランドのみの取扱いですが、数年前から双眼鏡8x42クラスにて測距内蔵モデルが低価格で市場に流通し始めている状況を鑑みると、恐らく8x56はまだパテントで保護されているのかもしれません。パテント切れのタイミングで8x56のRange Finder仕様カテゴリに新たな競争の火がつくかもしれません。

 

それでは本題です。

左の図は明所と暗所における瞳の大きさの違いです。人の瞳(*カメラで言うところのシャッターという例えが良く使われます)は、オートフォーカスであることに加え、明るい所では3㎜程度に小さくなり(シャッターを絞り明るくし過ぎない)暗い所では逆に7㎜程度まで大きく(シャッターを開放状態にして長時間露光モード)なります

 

少しだけ脱線すると、これは専門用語では暗順応、英語でいうとDark Adaptation と言います。もう少しこのあたりを詳しく知りたい方は(外部サイト:Wiki)をどうぞ。ひとみ径については、過去のBlogにて一度触れさせて戴いたことがございましたので、一応こちらもどうぞ。

 

それでは、前述の明るい環境、そして暗い環境におけるの瞳のサイズ変化を踏まえてBlogを先へ進めます。

 

双眼鏡の対物レンズサイズは4グループに大分類できます。20㎜、30㎜、40㎜、50㎜です。対物レンズが大きくなるに従い価格も高くなります。今回は8x56との違いがわかりやすいよう、8x20という小型な双眼鏡を比較に用いてみます。左図は双眼鏡のひとみ径の計算方法です。対物レンズ径を倍率で割算をしてあげると、双眼鏡のひとみ径が分かります。『明るいと感じる双眼鏡』は、ひとみ径が6㎜〰7㎜確保されていることが多いです。ここで言うところの "ひとみ径” というのは、例えるならば、光の束がレンズを透過する帯幅とイメージしておいてください。8x20では2.5㎜帯幅、8x56では7.0帯幅といった具合です。

 

先の説明を踏まえて、先ずは8x20の双眼鏡を見ていきます。

8x20双眼鏡のひとみ径は2.5㎜です。明所での瞳の大きさは約3㎜です。光の束は2.5㎜、それを受光する瞳の大きさは約3㎜。双眼鏡で捉えた光の束のすべてを瞳で感じ取ることが可能です。

 

一方、暗所での瞳の大きさは約7㎜です。双眼鏡が捉えることが可能な光の束は約2.5㎜。暗所で大きく見開いた約7㎜の瞳受光可能容量に対して、双眼鏡ひとみ径は僅か2.5㎜ですので、双眼鏡を覗いてみると❝暗い❞と感じてしまうわけです。7㎜幅の受光レンズに2.5㎜幅の光束しか入射しないというイメージです。

 

お待たせいたしました。ハチゴーロク双眼鏡を見ていきます。

8x56双眼鏡のひとみ径は7.0㎜です。明所での人の瞳の大きさは約3㎜です。双眼鏡が対物レンズから取り込む光の束は7㎜、それを受光する瞳の大きさは約3㎜。明所では、おつりがきてしまうほどの光の束、日中の人の瞳サイズでは、全ての光を余すことなく受光することは出来ませんが、対物レンズが大きい分、32㎜径や42㎜径と比較しても大変明るく見えます。

 

それでは暗い場所ではどうなのか。双眼鏡のひとみ径7㎜に対し、大きく見開いた約7㎜の人間の瞳。7㎜幅の光の束を余すことなく約7㎜サイズに見開いた瞳で受光するわけです。重くゴツイのがダウンサイドですが、この独特なサイズ感を有するハチゴーロクが独ハンターに愛される狩猟用双眼鏡と言われる所以です。

 

夜、或いは暗い場所で双眼鏡を使って対象物を観察しようとする際、小型の双眼鏡の場合、〝暗くて見えない゛といったご経験をされた方は少なくないと思います。例えば森や林の中など光が届きにくい環境に入った際、人間の瞳は最大で7㎜程度まで大きくなるといわれています。

 

〝暗くて見えない゛理由のひとつは、双眼鏡のひとみ径です。上は8x20と8x56双眼鏡を暗所で比較したときの簡単な図解です。8x20との比較で、ハチゴーロクが圧倒的に明るく見える理由は、双眼鏡のひとみ径7㎜に加え、対物レンズ径が56㎜もあるため、レンズを通して採光可能な光量が小型双眼鏡と比べると段違いに多いことに起因しています。さらに言うと、レンズ材質、プリズム、コーティングといった要素も8x56双眼鏡カテゴリーの中でもその優劣を分かつファクターです。

 

以上がハチゴーロクがハンター向けの〝明るく見える双眼鏡〝として好まれる簡単な理由説明になります。

 

今回は久しぶりの狩猟用双眼鏡についてのBlogでした。少し長くなってしまいましが、今回もここまでお付き合いをいただきありがとうございました。

 

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【距離計を内蔵したドットサイト】

狩猟における実際のフィールドでは、標的までの距離を知っているか否かで、得られる結果に大きな違いが現れます。

 

DoRaSight(ドラサイト)は、レンジファインダー内蔵型のドットサイトです。つまり、ドットサイトの赤点を覗きながら、視点の移動で標的までの距離が判る。測定可能な最大距離は800メートル