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ビクセン アルテス5-30x56ELD20の話。

今回は34㎜チューブ径、対物レンズ径56㎜、第2焦点面にレチクルを備えるビクセンの アルテス 5-30x56 ELD20。過去Blogでは、レチクルを使った距離計測に触れた機会というタイトルで触れたスコープです。ロングレンジ向けスコープに分類されるこのスコープ、見どころがたくさん用意されているスコープですので、フィールドでの使用も含め、先のBlogでご紹介をしてまいりますが、今回はレチクルの移動量についてです。

 

【レチクル移動量】

まず初めに、今回あらためて、Vixen Artes 5-30x56ELD20の物理的な移動量を確認してみました。

 

エレベーションを巻き上げ、最端位置にレチクルを置いてからのスタートです。逆側の最端までは、9回転と32クリックでした。

 

アルテスの場合、1回転で11MOAですので、9回転を掛けると99MOAとなり、半回転分の5.5MOAとあわせ、レチクルの最大移動量は、ざっくり100MOA(+/-50MOA)という感じです。100m先で最大約1.5m、500m先では約7.5mの着弾点を補正することができますので、ロングレンジ向けとしては十分なレチクル移動量を備えています。

 

【第2焦点面スコープ】

以前のブログで、第2焦点面にレチクルを備えるスコープについて触れた機会がありました。このアルテス 5-30x56ELD20のレチクルは第2焦点面(以下SFP)に備わっています。レチクルの指標を用いる場合、第1焦点面(FFP)にレチクルを備えるスコープとは異なり、SFPではメーカー側で設定された倍率 at 100mでのみ(アルテス5-30x56 ELD20の場合は20倍)、示された指標として活用することができます。

 

【チューブ径いろいろ】

ライフルスコープのチューブ径には大きく3種類あります。1インチ(25.4㎝)径、30㎜径、そしてアルテスなどが採用する34㎜径です。

 

ロングレンジ向けスコープへのニーズ(高倍率化)を満たすため、対物レンズは大口径化し、今では56㎜が一般的です。細分化している競技射撃ですが、高倍率スコープへのニーズが高い精密射撃において、着弾点を補正するためのエレベーション調整幅は重要な要素です。この幅、スコープに内蔵されている調整機構でレチクルの移動量上限が決まります。より大きな調整幅を持たせるため、径の太い34㎜が有利というわけです。

 

【ロングレンジ向け】

このスコープ、ウィンデージとエレベーション、1クリック当たりのレチクル移動量は1/8MOAです。ビクセンのライフルスコープで、この移動量を有するロングレンジ向けモデルは、現状 Vixen ARTES 5-30x56 と Vixen 6-24x58 の2モデルでしょうか。

 

この移動量、距離100m先において1クリック分つまみを動かすと、約3.75mm レチクルが移動します。1/4MOAを有するスコープよりも細かな調整が可能ということです。手前の距離50mでは半分の約1.87mmです。逆に距離200m先では、倍の約7.5mm。といったクリック当たりの移動量です。

 

【1/8  MOA の移動量】

ご参考までに。1MOA=約30mm(約3㎝ at 100m) として算出していますが、精密射撃において累積される端数は着弾点誤差に繋がりますのでご注意を。以下はクリック当たりの移動量です:

 

1000m:約37.5mm per click

  500m:約18.7mm per click

  400m:約15.0mm per click

  300m:約11.25mm per click

  200m:約7.50mm per click

  100m:約3.75mm  per click

    50m:約1.87mm per click

    10m:約0.37mm per  click

 

 

【1/4  MOA の移動量】

一方、1インチや30㎜径で一般的な移動量は1/4 MOAや、1/2MOA です。ご参考までに1/4MOAのクリック当たり移動量はこんな感じです。

 

1000m:約75mm per click

500m:約37.5mm per click

400m:約30.0mm per click 

300m:約22.5mm per click

200m:約15.0mm per click

100m:約7.5mm per click

 50m:約3.75mm per click

 10m:約0.75mm per click

 

【横線はウィンデージ】

エレベーションに加え、ライフルスコープにはウィンデージが備わっています。ウィンデージとは、水平方向の着弾点と、スコープを通して狙う狙点(Point of Aim)のアライメントを取るために備わっている機能です。

 

 

風による着弾点への影響をレチクルで補正するため、スコープに備わる内蔵機構がウィンデージですが、狩猟という分野において話をすれば、射撃のその都度ごとにこのウィンデージを調整し直すことによる弊害はあります。

 

そこで、まずは射撃場でゼロインを設定する際には、まずはエレベーションをしっかりと整えておくことが大切かもしれません。

 

【ゼロストップ機構も】

こちらは、ゼロストップ位置へリングを下す前の図です。ビクセンのアルテス 5-30x56 には、ゼロストップが付いています。キャップを取り外して、ゼロ位置を決めるリングを手動で固定すれば完了です。

 

アルテスのゼロストップについてこちらをご参照ください。

【まとめ】

今回、ロングレンジ向けライフルスコープ、アルテス 5-30x56 ELD20 が持つ特長に触れました。倍率と対物レンズ径に加え、ロングレンジ向けとして重要視されるスコープが有する仕様のひとつ、レチクルの移動量。但し、これが絶対的なすべてではありません。ロングレンジでの射撃や狩猟では、フィールドで体感する現状の装備では正確に狙えない距離という不自由さに気付く場面があります。

 

この不自由さを克服していくプロセスも、スコープを操るシューターの醍醐味かもしれません。狩猟向け製品市場に目をやってみると、ハンターにとっての選択肢は多く、ご自身のニーズに合ったハードウェアでライフルスコープの不自由を補完することもできます。

 

今回もここまでお付き合いをいただきありがとうございました。

 

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