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Vixen Artes ELD20 MOA レチクル を用いた距離の計測。

今回は、第2焦点面 (SFP) MOA レチクルを用いた距離の求め方です。第1焦点面レチクルとは異なり、SFP レチクルでは特定の倍率時でのみ、レチクル上の指標から正しい情報を読み取ることができます。今回取り上げさせていただくのはVixen Artes 5‐30x56 ELD20(34mm)です。Vixen Artes 5‐30x56 ELD20 SFP レチクルにおいては、倍率20倍時でのみ正確な情報をレチクル上の指標から読み取ることが出来ます。

 

まず、MOAレチクルを用いてターゲットまでの凡その距離を測る前に、ターゲットの大体のサイズを知っておく必要があります。例として準備したグリッド ターゲットの実サイズは縦60cm x 横60cm です。Vixen Artes 5-30x56 ELD20 レチクルには、水平方向に中心から左右へ向けて各20MOA(1MOA刻み)の指標が付いています。ちなみに、1MOA は 100メートル先で約3cmとして換算(注:厳密には3cmではなく+/-2.9cmとされ、この3cmという解釈では射撃距離が長くなるほどに着弾点に誤差が生じることが知られていますが、ここでは約3cmとして話を進めます。)することができるため、縦60㎝ x  横60cmをMOAに換算するとおよそ、縦20MOA x 横20MOAに相当します。

 

Vixen Artes 5-30x56 ELD20 を使い、倍率20倍時において100メートル先をスコープで覗き込んだ際、レチクル内に120cm x 120cm サイズ(縦40MOA x 横40MOA)のターゲットがスッポリと入るということを意味しています(*ちなみに、レチクル垂直下方向へは、目盛りが更に深く刻まれていますので、弾道落下軌道補正にも対応可能です)。

 

上述の点を事前に知っていると、

 

例①、仮にArtes 5-30x56 スコープを覗き込み(*設定倍率は20倍)、事前に大きさが判明している縦60cm x 横60cm のグリッドターゲット がスコープ中心から左右20MOA(左写真参照)に収まっている。すると、このターゲットは射手から約100メートルの距離に位置している。ということが計算をせずに知ることが出来ます。

 

 

 

一方、こちらの場合(左写真)はどうでしょうか。

 

例②、倍率20倍時において、同サイズのグリッドターゲット (60cm x 60cm) がスコープ中心から左右10MOAに収まって見えています。グリッドターゲットの大きさが、100メートル時の半分の大きさに見えていることから(遠い距離に位置)、射手からは約200メートル距離にグリッドターゲットが位置している。という判断がレチクルから可能になります。

ライフルスコープのMOAレチクルを用い、ターゲットまでの距離を測る別の方法として、広く知られている計算式を用いることもできます。その計算式は:

 

(実際のターゲット大きさ(cm) ÷ スコープ越しに見えるターゲット大きさ (MOA at 20倍時))x 34.38 = ターゲットまでの距離(meter)

 

といった計算式です。ターゲットの高さと幅を各々計算し、そのアベレージを取るといった方法で距離の測定精度を上げることも一つです。

 

まずは前述の2例をもちいて計算式を使ってみます。ターゲットの実サイズは縦60cm x 横60cm です。

 

例①、( 60cm ÷ 20MOA ) x 34.38 = 103.14 meter です。先の目測で1MOAを約3cm とした誤差が現れています。

 

例②、( 60cm ÷ 10MOA ) x 34.38 = 206.28 meter です。上の例と同様の理由による誤差です。

 

最後に、高さ10.5cmの缶コーヒーが、Vixen Artes 5-30x56 スコープ越しに 5MOA (20x時)で見えているとすると?

 

10.5cm ÷ 5MOA x 34.38 =  72.19 meter ということになります。

 

しかしながら、射撃時の時間的制約とその緊張下においては、レンジファインダーによる距離測定が一番実用的かもしれません。

 

話は変わりますが、Sig Sauser 社のBDX (バリスティック データ エクスチェンジ)ライフルスコープシリーズは、2020年狩猟スコープ市場における技術分野の最先端を走っています。Sig Sauer 社のサイト内製品説明によると、 BDXシリーズのライフルスコープは、スコープ、レンジファインダー、専用APP(必要な要素を入力)が相互に通信し、弾道落下補正後の着弾点をレチクル内LEDを点灯させることで射手へ伝えるというものです。類似機能を持ったスコープ (M7Xi IFS 4-28x56) がSteiner社から製品化されていますが、こちらはオールインワンの製品です。消費者向け価格は6000米ドル程度でしょうか。

 

スコープを含む光学機器の製品進化、或いは別分野の先端新技術との融合は、他業界のそれと比較すると少し遅れている様に見えますが、海外の国際展示会では部品メーカーも含めて新たな試みの芽が確認できます。参入障壁が低い業界では決してありませんが、新規参入にとっては伝統的かつ保守的な市場はチャンスです。一方で、過去の経験に縛られ自らが変われずにいるメーカーにはこのさき厳しい戦いが待つはずです。 

 

Pulsarのサーマルイメージング、Yukonのナイトビジョンに加え、無線通信機能、各種センサー、マルチプルレチクルが内蔵されたリーズナブルプライスな民生向けスコープは、この先に待つ狩猟市場の未来です。(*ちなみに、Pulsarは、Yukon Advanced Optics Worldwideの傘下ブランドです。)