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エアライフル 傾斜マウントのススメ

空気銃を所持している方、” エレベーションが足りない… ” そんなご経験をされた方がいらっしゃるかもしれません。このトピックは過去Blogにて少し触れさせていただいたことがありましたので、こちらもどうぞ。ロングレンジシューターへ向け、意図的に前傾斜させたスコープマウントがあります。傾斜マウントは空気銃向けに用意されたマウントではありません。この製品の本来の需要者は、いくらエレベーションを移動させても正確にPOIを補正するためのレチクル目盛り自体が足りない…といった "超"長距離射撃(ELR: Extreme Long Range)競技市場で活動するハードコアユーザーグループです。ライフルスコープの光学的な不自由さを解消するため、幾つかのブランドからマウント製品が市場へ投入され、彼らのニッチなユーザーニーズに応えています。

 

ELRなど弾が極端にドロップする場面の弾道落下補正を念頭に、極論を言ってしまうと、ライフルスコープの中心から上部分のエレベーションは不必要で、この場合、むしろ着弾点から下部分(ドロップ対応のためのエレベーション移動量)が重要になります。

 

そこで、スコープを前傾させることにより今まで使うことが出来なかったレティクルの中心から上側を有効活用できるようにしよう。というのが各メーカーが謳う傾斜マウントの使用提案です。中には、物理的にスコープを傾斜させるのではなく、例えば望遠鏡のフリップミラーのように光の屈折を利用し光学系への入射光路を変え、弾道落下に対応するべく光学系から得られる像を上方向にシフトさせるといったユニークなELR向け製品も存在します。

 

狩猟用に用いられるロングレンジ向け Vixen Artes 5-30-x56を例に取ってみます。このスコープは34㎜チューブ径を有し、エレベーション移動量については +/-50MOA (Total 100 MOA)と30㎜チューブ径スコープと比べると明らかに優位なのですが、ELR領域における使用用途での落下補正可能量という点について言えば、実際は100MOAの半分、50MOA分のエレベーション移動量しか生かし切れていません。一般的なマウントリングにスコープを取り付けた状態では、ボアラインに対しサイトラインのエレベーション移動可能範囲は上下で50 MOA:50 MOA(図参照)です。日本における狩猟シーンではありえませんが、弾道落下補正のため、エレベーションを 55MOA 調節したいという場合はお手上げということになってしまいます。

 

そこで傾斜マウントの出番です。傾斜マウントにライフルスコープを取り付けると、ボアラインとサイトラインの関係を、例えば 20:80といった比率に変えることが可能です。この変化が意味することは、ドロップ時のPOI補正をしたくても ”レティクル下部のサブテンションが足りない!” といったこれまでの悩みを解消することが可能という意味です。落下補正というケースでは、空気銃をご使用の方々で射撃場での練習時にペレットの着弾点補正に苦労されたご経験がある方もいらっしゃるかもしれません。一方で、傾斜後のダウンサイド(欠点)といたしましては、ELRの様な極めて離れた距離にある的に着弾させようとする場合、任意に設定していたPOIがシフトしてしまうため、ゼロイン(POI)は上図にあるレティクルの、例えば下ポストあたりになると思います。それ故、ゼロインを済ませた距離よりも手前のターゲットを狙う場合はホールドダウン(銃バレルを下方へ僅かに傾斜)させる必要があり、加えて、傾斜により傾いたスコープを覗き込んだ視野に銃バレルが映り込んでしまうなど、セッティング時に回避しなくてはいけない点も出てきます。

傾斜マウントの種類ですが、ツーピース型の場合は前後のマウントリングでスコープを傾斜させ、ワンピース型の場合は傾斜角度が固定されているタイプ、そしてアジャスタブルと呼ばれる傾斜角の調節が可能なマウントが存在します。このサイトは狩猟向けの情報サイトですが、ターゲットまでの射撃距離が最大でも数百メートル以内といったハンティング用途では、傾斜マウントが必要になる場面は殆どないと思います。

 

今回もBlog本線から少し脱線してしまいます。

 

さて、唐突ですが6.5 Creedmoor, Ballistic Silvertip 140 Grains(外部リンク:英語サイト) というカートリッジを例に取って弾道落下の実際を見てみます。これをウィンチェスターのバリスティックカリキュレーター(注:外部サイト)にかけて見ると、弾道落下シュミレーションを確認することが出来ます(写真参照データ元:Winchester Ballistics Calculator)。

 

シュミレーション結果を見てみると、距離150ヤードまでのドロップレートはほぼゼロですが、300~400ヤードではドロップ約20インチ(約50㎝)、400~500ヤードではドロップ約30インチ(約76㎝)、500~600ヤードでは約40インチ(約101cm)、600~700ヤードでは約50インチ(127㎝)、700~800ヤードでは60インチ(約152㎝)近くドロップし、結果としてトリガーを引いた地点から800ヤード先の着弾点までに200インチ(約508㎝)のドロップが発生するであろうことがわかります。Winchester Ballistics Calculatorのシュミレーション結果からは、6.5 Creedmoor, Ballistic Silvertip 140Grains は距離500ヤード程度から先の弾道落下レートが急激に上がることが確認できました。ちなみにこちらのシュミレーターでは800ヤードが表示限界距離です。

 

次にご紹介するのシュミレーションチャートは、6.5 Creedmoor, Ballistic Silvertip 140 Grains を用いた場合の射撃距離と着弾時速度の関係を示しています。

 

100ヤード地点のPOIでは、弾速2525 FPS(フィート毎秒)です。この速度はマッハ 2.24(*四捨五入)、超音速と呼ばれる速度(外部参照サイト:Wikipedia いろいろ勉強になります)です。800ヤード先のPOIへの着弾時でも、重力に引き寄せられ5.08mの弾道落下(23.87MOA at 800 yards)をしながらも、弾速は依然 1492 FPS(マッハ 1.33/*四捨五入)もあります。800ヤードの射撃距離で5.08mのドロップですので、同条件で2倍(1600)、3倍(2400)の距離にあるTargetをとらえようとする場合のドロップレートが激増することは容易に想像ができます。そこでいよいよ傾斜マウントの出番!というお話なのですが、脱線度合が過ぎてしまったようです。

 

傾斜マウントのBlogを書き進めていくはずが、今回は脱線し過ぎて最後は弾速のお話になってしまいました。申し訳ございません。狩猟用空気銃に傾斜マウントを取り付け、近々射撃場にてテストを行う予定ですので、この埋め合わせは結果レポートとして先のBlogにてご報告をさせていただきます。

 

 今回のBlogはこの辺りで失礼させていただきます。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。