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その②、1MOAと距離。そろそろ狩猟シーズンの準備です。

前回のBlogでは、❝1MOAというのはある地点から宇宙の彼方まで行っても1MOA❞ というところまでお話をさせていただきました。今回のテーマも引き続きなのですが、記事の中心は距離50mと100mにおける着弾点の補正です。射撃場でのゼロイン セッティングに際し、今回のブログが少しでも皆様のお役に立てばと考えております。

 

それでは1MOAと距離、後編いっています。

 

【1MOAと距離の話】

本州での狩猟におきましては、距離30m〜100m前後というのは、フィールドで多くの方々が実際にハンティングを行う身近な距離かと想像します。そこで、距離に応じて変化する1MOA当たりの移動量について纏めてみました。

  

【距離100m】

距離100mでは、1MOA=約3㎝です。

これは、お持ちのスコープにもよりますが、1クリックで1/2MOA(2回クリックで1MOA)、1/4MOA(4回クリックで1MOA)、1/8MOA(8回クリックで1MOA)、という具合です。エレベーションダイヤルには何れかの表記が付いています。

 

着弾点に対し、スコープのレチクルを補正したい分だけツマミを回します。例えば、左方向へ2MOAなのか(ウィンデージを使います)。あるいは下方向へ3MOAなのか(エレベーションを使います)。この作業を繰り返しつつ、着弾の精度を追い込んでいきます。

 

 

1MOA at 100m = 約3cm

10MOA at 100m = 約30cm

20MOA at 100m = 約60cm

30MOA at 100m = 約90cm

40MOA at 100m = 約120cm

50MOA at 100m = 約150cm

60MOA at 100m = 約180cm

70MOA at 100m = 約210cm

80MOA at 100m = 約240cm

90MOA at 100m = 約270cm

100MOA at 100m = 約300cm


【距離50m】

さて次は距離50mです。

この距離では、1MOA=約1.5㎝とクリック当たりの移動量は100m時の半分になります。この距離で、仮に垂直方向に15㎝の着弾点補正を行う場合、10MOAの移動量が必要です。

 

ゼロインの際、この移動量をスコープのエレベーションで使ってしまうとあれですので、例えば10MOA、20MOAといった傾斜の掛かったベースレールを使う。これもスコープのエレベーションを節約しておくための選択肢です。空気銃の場合、あらかじめレールに傾斜がかかっている親切なタイプもあるかもしれません。

 

距離50mにおける1MOA~100MOAまでの移動量変化です。1MOA当たりの移動量は約1.5㎝ですが、100倍の100MOA時の移動量は約150㎝になります。この関係は常に比例していますので、それほど悩まなくても大丈夫です。

 

1MOA at 50m = 約1.5cm

10MOA at 50m = 約15cm

20MOA at 50m = 約30cm

30MOA at 50m = 約45cm

40MOA at 50m = 約60cm

50MOA at 50m = 約75cm

60MOA at 50m = 約90cm

70MOA at 50m = 約105cm

80MOA at 50m = 約120cm

90MOA at 50m = 約135cm

100MOA at 50m = 約150cm


【距離30m】

距離30m。

エアライフル(空気銃)では馴染みのある距離です。この距離では、1MOA分のクリックで約9㎜の移動量となります。射撃場でゼロインを済ませていれば、フィールドにおいてエレベーションを調整する距離ではないかもしれません。

 

30ないしは40 MOA程度までしか一般的なスコープでは調整が出来ないと思いますが、一応 @ 30m ということで、100 MOAまで真面目にやっておきます。ご参考までに、100 MOA at 30m では、約90㎝の移動量です。

 

1MOA at 30m = 約9mm

10MOA at 30m = 約9cm

20MOA at 30m = 約18cm

30MOA at 30m = 約27cm

40MOA at 30m = 約36cm

50MOA at 30m = 約45cm

60MOA at 30m = 約54cm

70MOA at 30m = 約63cm

80MOA at 30m = 約72cm

90MOA at 30m = 約81cm

100MOA at 30m = 約90cm


【距離10m】

この10mという距離は射撃場、あるいは体育館等にあるエアライフル射撃施設です。

 

この距離では、仮に30 MOA分のツマミを回したとしても(Vixen 6-24x58で言うと、ツマミ5回転)、着弾点補正幅は、約9㎝。こうした場合、ツマミを回して30MOA分の補正をかける前に、少し前の作業に戻り、スコープの取付けを丁寧に確認した方が良いかもしれません。10mの次は、30m、ないしは50mにて再度調整をすることで、よりフィールドにおける実用精度を高められるのではないでしょうか。

 

仮に100MOAが使えたとして、距離10mでは約30㎝の移動量です。

 

1MOA at 10m = 約3mm

10MOA at 10m = 約3cm

20MOA at 10m = 約6cm

30MOA at 10m = 約9cm

40MOA at 10m = 約12cm

50MOA at 10m = 約15cm

60MOA at 10m = 約18cm

70MOA at 10m = 約21cm

80MOA at 10m = 約24cm

90MOA at 10m = 約27cm

100MOA at 10m = 約30cm


【スコープの限界】

ライフルスコープのレチクル移動量には限界があります

例えば、+/- 70MOAの移動量を有するスコープは一般的ではありませんし、もちろん、これ程のレチクル移動量は、エクストリームロングレンジ(*射撃距離2000m先での着弾点補正など)は例外としても、日本国内における装薬銃使用で、移動量最大70MOAもの着弾点を補正したい場面はありません。但し、エアライフルを除いては。

 

【エアライフルに有効】

スプリング式空気銃であれば距離50mでドロップ75㎝前後、プリチャージ式空気銃なら距離100mでドロップ45㎝前後のドロップでしょうか。MOA換算でそれぞれ、50MOAと15MOA。

 

でももし、70MOA、あるいは20Mradの着弾点補正が可能になるギアを、スコープに後付けで付与することができるとしたら?

 

30㎜、34㎜チューブ径だけでなく、1インチスコープにもそれが可能だとしたら。

 

写真は一例です。スコープのエイム緑丸に対し、ペレットの着弾点が青丸。この時点でエレベーションを回し切っている一方、実際の的はレンズ下端だったりします。

 

【その先の距離】

普通のスコープであれば30~40MOA以上の着弾点補正は 難しいことから、レチクルの一番下の方に何となくボヤっと見える的を狙うパターンが多いかもしれません。

 

そんな時はエラタック傾斜マウント。0 MOA ~70 MOAまでの着弾点を10MOA刻みで調整可能。Mrad版であれば5Mrad~20Mradまで、5Mrad刻みで4段階(100mでダイヤル当たり50㎝の移動量、最大200㎝)の調整が可能。傾斜不要な平常時はダイヤルを0へ戻す。詳しくはお近くの銃砲店様へぜひご相談ください。

 


 

今回のBlogテーマ、1MOAと距離につきましては、後編その②で完結です。長いブログになりました。前後編でMOAについて何となく ❝あぁーなるほど何となくそうなのね❞ と理解を助ける資料になれば幸いです。

 

今回もここまでお付き合いをいただきありがとうございました。

 

InstagramSNSにて情報発信もしておりますのでよろしくお願い申し上げます。

 

【距離計を内蔵したドットサイト】

こんな光学機器もあります。

狩猟における実際のフィールドでは、標的までの距離を知っているか否かで、得られる結果に大きな違いが現れます。

 

DoRaSight(ドラサイト)は、レンジファインダー内蔵型のドットサイトです。つまり、ドットサイトの赤点を覗きながら、視点の移動で標的までの距離が判る。測定可能な最大距離は800メートル