その❶ライフルスコープを傾ける?どうゆうことですか?

この狩猟業界に入って間もない頃、ロングレンジシューター同士が会話をしているところに居合わせたことがありました。

その会話の中で、ライフルスコープを傾斜させる。 という場面がありましたが、その時はMOA(過去Blog)、Mrad、レチクル移動量といった専門用語については少し勉強しはじめていた頃でしたが、スコープを傾斜させる意味と理由は理解できませんでした。感覚的には、❝スコープの対物レンズ側を上方向へ向けて傾斜させる。❞ のであれば何となくイメージが多少沸く気がしましたが、ライフルスコープの前方を下方向へ向ける『前傾』でした。

 

今回は、初めての方にはちょっとイメージしにくい、ライフルスコープを傾斜(前傾)させる理由と、その効果が得られる仕組みを簡単にBlogで紹介させていただきます。

 

【スコープのサイトラインと弾道】

通常、装薬銃や空気銃に取り付けられているライフルスコープはバレルに対して水平です。上図で描かれている弾道は分かりやすいよう誇張して表現していますが、バレルを飛び出た弾は、緩やかな弧を描きながら的に着弾する。というイメージ図です。

 

実際にはここまで極端な弧を描くことはありませんが、こちらのイラストでも誇張した表現を使います。

射撃距離にもよりますが、弾道は最大で2回、ライフルスコープのサイトラインと交差します。これらは1stゼロ、2ndゼロと呼ばれます。実際には、この間にある緩やかな弧の最上弦付近でゼロインをしているハンターの方も少なくありません。

 

【ロングレンジだ!】

それでは、上図で言うところの2ndゼロよりも遥か先にあるターゲットへ着弾させるにはどうしたらよいのか?

 

この問いに対する答えは ❝猟銃のバレルを僅かに上方向へ傾ける❞ ということになります。昭和のころ、近所の公園でブランコに乗って誰が一番遠くへジャンプできるかを競う遊びに興じていたことを思い出します。ブランコを前後に振りながら、絶妙な射出角度による大ジャンプで、公園内の鉄柱にスネを打ち付け悶絶したこともありました。

 

遠くへ飛ぶためにはブランコからの射出角度が重要でした。装薬銃および空気銃においても、遠い距離にあるターゲットへ着弾させることを意識する場合、バレルを上方向へ僅かに傾斜させることで弾の弾道は変わり、射程距離を伸ばすことができます。但し、猟銃の場合、ブランコとは異なり、仮に着弾地点を前もって正確に把握しないままこうした行為をフィールドで行ってしまうと、大きな事故に発展する可能性があることに加え、取り返しのつかない代償を伴う大きな責任を問われる為、射撃場にて訓練と併せて試射することを強くお勧めします。

 

追記:令和4年7月26日

上図についての補足説明です。

ライフルスコープのエレベーションつまみ(過去Blog)を回すことで、レティクルを上下に移動させることができます。ライフルスコープの移動量(過去Blog)を確認すると、例えば+/-25MOA、あるいは+/-50MOA、34㎜チューブ径といったライフルスコープでは、+/-70MOAというレティクル移動量を有するスコープがあります。移動量とは、100m先における着弾点の補正幅を示すものであり、この補正幅が大きなスコープはチューブ径が太いものが多いです(*その用途に意図され設計されている為、必然的に太いチューブ径、別の言い方ではエレベーション機構の可動範囲を広く確保できる内部構造が要求されます)。しかしながら、ロングレンジ射撃の場合(特にエアライフル)、スコープに内蔵されているエレベーションだけでは対応しきれない移動量(着弾点の補正)が多くの場面で発生します。そうした時に有効な解決方法が傾斜しているマウントや、傾斜ベースレールです。

 

【スコープを前傾させよう】

ペレットを含む、弾の弾道落下が伴うロングレンジシューティングにおいて、必ず登場するのが傾斜マウントと呼ばれるスコープの支持具です。これらの全ては『前傾』しています。前に傾いているということは、スコープを取り付けると、前側(対物レンズ側)が下方向に傾いてしまうということです。

 

前述のバレルは、遠距離射撃では上方向へ僅かに傾けると言いました。初めのころ、私は、❝何故バレルをへ向けるのに、ライフルスコープを逆にに向けてしまうのか? ❞ と少し混乱しました。

 

恐らくは、私と同じようにこの理屈を上手く消化できないハンターの方々もいらっしゃるかと思います。

大丈夫です。専門分野以外のことです。初めは誰もわからないことだらけですが、わかり始めると面白くなるのが弾道落下です。以下で丁寧に説明してみます。

 

【傾斜マウントの効果】

先ず初めに、傾斜マウントを用いる前(上イラスト)と、用いた後(下イラスト)の比較を説明してみます。

 

図の上は、射撃場にてガンレストを用い、シューターの任意距離でゼロインを済ませ、スコープを覗きレティクル中心にターゲットを捉えているというシーンのイメージ図です。一般的なマウント(傾斜無しの製品)をスコープ支持具として使用しているこの状態で引き金を絞ると、スコープの中心(ゼロイン位置)に着弾します。

 

一方で、その直下に並べたイラストでは、同条件において傾斜マウントを使ったことで得られる効果が表れています。ライフルスコープが前へ傾いているため、スコープを覗くと、レティクルの上ポストにターゲットを捉えています。この状態のまま引き金を絞ると、弾は青色ドットに着弾(レティクルの上ポスト)します。

 

ここでついに今回のBlogテーマ登場です。ライフルスコープを傾ける

 

本当はここまで長いBlogになる予定ではなかったのですが、丁寧な記事内容を心掛けるとすると、今回のこのテーマは、その❶とその❷の2部構成とさせていただくことがベターという結論になりました。

 

後半のその❷は(令和4年8月2日Blog更新)、当初のスケジュールに沿って8月上旬に準備完了できる見通しです。

 

今回もここまでお付き合いいただきありがとうございました。

 

InstagramSNSにて情報発信もしておりますのでよろしくお願い申し上げます。

 

【距離計を内蔵したドットサイト】

こんな光学機器もあります。

狩猟における実際のフィールドでは、標的までの距離を知っているか否かで、得られる結果に大きな違いが現れます。

 

DoRaSight(ドラサイト)は、レンジファインダー内蔵型のドットサイトです。つまり、ドットサイトの赤点を覗きながら、視点の移動で標的までの距離が判る。測定可能な最大距離は800メートル