
【はじめに】
今回はエラタック傾斜マウントの話です。このマウント、一見すると何ともゴリゴリした感じの黒いマウントですが、普通のスコープマウントとは全く用途が異なる、ドイツ製のタクティカルマウント。今回、マウントとしての特殊用途の説明は脇に置いておいておき、実は皆さんがあまり気にしていないクランプ方式(ウィーバー/ピカティニーレールへの固定様式)について触れていきます。
【ナット固定方式】

スコープマウントの固定方式。ライフルスコープは、ゼロイン後に着脱をしない(*着脱してしまうとゼロインが…。)という心配があります。
故に、ゼロインがズレないよう、スコープマウントはナットでガッチリ固定したいというシューターの方々は多いです。
但し、締め付ける力を任意で調整が可能なトルクレンチといった工具で固定しない場合、どうしても人間の ❝これくらいかな?❞ という先入観が入り込んでしまい、常に同じ力で固定することは難しいです。
【クイックリリース式】

そこで今回のブログテーマ、❝クイックリリース(QL)式はどうなのか?❞ 結論から申し上げると、エラタックマウントのQL固定方式の場合、常に同じ力でクランプをするため、仮に脱着を行ったとしても、絶対にズレないとは言えませんが、ズレの範囲は常に許容値におさまります。
【ご注意】
本ブログで言う所の ❝この許容値❞ というのは、高い次元での精密射撃を求められる場面が少ない狩猟に限った話であり、競技としての精密射撃や長距離射撃のケースには当てはまらないので、ポン付けでえいっ!という感じではございませんので、よろしくお願いいたします。
【着脱の実際】

仕事柄、当方は長瀞射撃場の50mと100mのレンジを高い頻度で利用させていただいておりますが、試射に用いるロングレンジ用のライフルスコープはほぼ一本(Vixen Artes 5-30x56、1/8MOA, 34㎜チューブ径)です。試射に使用する銃器(エアライフル)は毎回異なり、タマと距離の要素を重ねると、同じ組み合わせは殆どありません。それゆえ、スコープの脱着頻度はかなり高いです。慣れていないと少し面倒な作業かもしれませんが、先述ライフルスコープのゼロイン設定は都度やりなおしています。
【再現性の高さ】

【エラタックなら】
エアライフル(空気銃)の場合、一番わかり易く装薬銃と大きく異なる点は出力です。製造メーカーにもよりますが、エアライフルのペレットは50m、100m先でも大きくドロップ(*この点も同じ射撃距離で比較した場合の装薬ライフルとは全く異なります。)します。
【ドロップ量】
その落ち幅は、空気銃にもよりますが、例えば35㎝、45㎝といった感じでしょうか。タクティカルマウントと呼ばれる所以でもありますが、エラタック傾斜マウントは5MOA、或いは10MOA刻み(*普通のレチクルは1/4 又は1/8MOAの1クリック当たりの移動量)で着弾点の補正が可能です。故に、空気銃を使って50m射座から100m射座へ移動して試射を繰り返す場合、このアドバンテージ(*その場で行える着弾点の素早い微修正)は大きなものだったりします。
【距離が変わっても】
当方は1本のロングレンジ向けスコープ(Vixen Artes 5-30x56)を複数の空気銃で使い回している部類のシューターですが、実際に試射を行った動画や写真を見ていただいてわかる通り、スコープを載せ替えたあとも、水平方向(ウィンデージ)には大きくズレていないことが多い為、距離に応じて着弾点の微修正を入れるところはエレベーション程度です。もちろん、エアライフル側の出力設定を大きく変更する場合、ウィンデージ側の修正も不可欠になります。
【スコープ付替え】

ご参考までに、下に2つの動画を用意しました。どちらも長瀞射撃場ですが、空気銃を使った試射をそれぞれ50mと100mで行っています。
ライフルスコープはVixen Artes 5-30x56EDであり、マウントはQL式のエラタック傾斜マウントを使用しています。
取付け時点で左右のウィンデージ調整に大きなずれが無いことを排除できるだけで、光学機器のゼロインは段違いに容易になります。
❝光学機器よりも先ず、スコープマウントの品質が重要❞ と言う議論にはそれなりの理由があったりします。一方はズーム気味に編集されていますが、下に用意した動画にあるスコープは同一のものです。
【エラタックで50m】
100mで試射したスコープをそのまま別の空気銃へ載せ替え、50メートルの試射へ臨んでいます。初弾の3発でゼロインを整えています。
【エラタックで100m】
こちらは100m先にある標的を重量弾スラッグで試射している動画です。このスコープは、別の日に実施した50m試射用に使用した異なる空気銃へ載せ替えています。
【まとめ】
今回はクイックリリース(QL)固定方式の地味な活躍について触れてみました。スコープマウントというのは、主役の光学機器と比べると、一見、その重要性にウェイトが置かれることがなさそうにも見えてしまいますが、光学機器よりもむしろマウントが重要だと考えるシューターも少なくありません。このQL式、一般的なな固定クランプ機構ではなく、解除ロックを外さないことには外すことが出来ないロック機構(*下図緑枠内のレバーに組込まれている部分)が採用されています。
クイックリリース(QL)式とナット式。固定という意味では同じ目的をなすものに見えますが、光学機器の着脱(付替え)を意識するなら間違いなくQL式がおすすめです。気になる方は専用ページにて詳細(製品ページへジャンプします)をどうぞ。ということで、今日はこの辺りでブログ終わります。ここまでお付き合いを戴きありがとうございました。
