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空気銃の傾斜レールとスコープ。前編

市場投入されているエアライフルにはレール(ウィーバー/ピカティニー又は11㎜など)が標準搭載されています。近年、多くの場合において、これらのレールにはあらかじめ傾斜が付いています。例えば FX airguns の 最新モデル、Impact M3 を例に取ると、このモデルには 20MOA の傾斜レールが標準化されています。これはメーカー側でロングレンジが意識されているが故の仕様だからです。今回のブログでは、標準化されている傾斜レールとスコープの関係について触れてみます。

 

【傾いていないレール】

エアライフルにおけるレール傾斜のUpsideについて触れる前に、傾斜が掛かっていないレール(0MOA:水平)について少し書いておきます。

 

【0MOAは水平】

現在の主流ではありませんが、空気銃(エアライフル)でも、傾斜が掛かっていない 0MOA レールのモデルは勿論あります。

 

当方はスプリング式の空気銃を所持しておりますが、この猟銃のレールは0MOAです。プリチャージ式との比較では、圧倒的にパワーが足りない為、猟銃が持つ有効射程の外側にある標的を狙う場合、バレルを僅かに上方向へ傾ける動作が求められます。

 

この場面、多くのハンターの方々は、スコープのエレベーションを最大限まで回し、標的を何とかスコープ内に捉えようとする解決法に向かいます。この写真では標的を視野に捉えていますが、この先の距離を狙う場合は更にバレルを上方向へ傾ける必要があります。この場面、傾いたレールがあると有効です。

 

【サイトラインは直線】

引き続き、ここで例に取り上げるエアライフルのレールは0MOA(水平)という前提で話を進めます。

 

光軸を意図的に変えるような例外を除き、シューターがライフルスコープを介して捉えている像は光軸の直線上にある対象物です。

 

次の図解では、ここに銃器の射線を追加していきます。

 

【0MOAとサイトライン】

理解を進めるために極論した図解を用いると、バレル射線(POI)に対し、スコープのサイトライン(POA)はこんな感じのイメージ図です。

 

但し、この状態から的を遠くへ移動させると、サイトラインは相変わらずの直線ですが、射線(ペレットの弾道)は距離が離れるに従い緩い曲線を描きながらドロップし始め、ある地点から弾道は大きく落下します。

 

【普段より遠い距離】

こちらの図、スコープ越しにはレチクル中心で的を捉えているものの、着弾点がズレる。少し面白そうな話になってきました。

 

この場合、幾つかの理由が考えられますが、ここでは、❝いつもよりも少しロングレンジな距離❞ として話を進めます。

 

 

【0MOAのレール】

この図。これは本ブログ冒頭に用意した射撃場の写真を横方向視点から図解したものです。

 

つまるところ、スコープのエレベーションを巻き上げ切ってしまったことに加え、この先どれだけバレルを上方向へ傾けたところで自身の着弾点も見えずわからず。これは危険射撃です。

 

今回のテーマ、いよいよ傾いたレールです。次は20MOAの傾斜が付いたレールを見ていきます。

 

【20MOAとエイム】

ボアサイティング後、射撃場では図の状態から、ゼロイン設定に臨み、スコープのウィンデージ/エレベーション調整機構を用いてPOA(エイム)とPOI(着弾点)を合わせる作業を皆さん行っています。

 

 図の場合、どのポイントでゼロイン(レチクル中心と緑色の点)を行うかによって近距離、遠距離の際、射撃時の対応が異なってきます。

 

【2つのゼロ】

前述の、❝いつもよりも少しロングレンジな距離❞ ということで、距離C も意識しつつの図解を用意しました。

 

さて、弾道に変化が表れています。

 

上図では距離Cに届かなかったペレットですが、下図では距離C でゼロインできています。理由はバレルが上方向へ僅か傾いた為です。スコープ中心で標的を捉えることができ、20MOAの効果出てます。

 

【ファーストは?】

距離Cでゼロインを行ったことにより、空気銃のバレルは水平ではなく、僅か上方向の傾きを得た状態でスコープ中心のPOAへ着弾するようになりました。

 

一方で、射手に近いポイントの距離Aはどうでしょう。

 

ハイエンドスコープには、ゼロインを幾つか設定しておくことが可能な製品があります。例えば100m、300mなど。これは別の機会に触れるとして、現実的な対処方法を見ていきます。

 

【理想と現実】

こちらは上図と同一ですが、距離A付近を拡大したものです。射撃場で設定を追い込み任意距離で遂に辿り着いた図中の2番目にある緑色の位置、ファーストゼロ。そして、フィールドにおいて理想的な状況と言えば、この位置に常に獲物が待機していること...。なかなか難しいかもしれません。

 

でも、ここが空気銃の面白いところで、この前後位置に捉えた標的に対し、自らが用意してきた練習と経験の引出しを使いつつ、思考を巡らせ瞬時に判断をする。ロマンですね。

 

【前編のまとめ】

今回は少し長いBlogになってしまいました。本当は1話完結を目指しましたが、伝えきれなかった部分を網羅しつつ、後編を用意して参ります。後編ではいよいよエラタック傾斜マウントの使いどころに触れて参ります。

 

今回もここまでお付き合いをいただきありがとうございました。

 

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