ビクセン フォレスタII ED HR8x56 WP 双眼鏡
価格と性能
ビクセン フォレスタII ED HR8x56 WPは中央ヨーロッパの狩猟に理想的な仕様を備えています。この辺りのハンティングは夕暮れにシカやキツネを、夜にイノシシを狩ります。これが明るい双眼鏡を必要とする理由です。それでは今回ビクセンから手に入れた双眼鏡を細かく見ていきます。
ライター: Roland Zeitler
世界の他地域で行われる狩猟の多くは日中ですが、ドイツにおけるハンティングは夕暮れ、或いは月夜に行われます。大抵の場合、マウンテンハンターを除き、忍び猟での射撃は難しい距離ではありませんが、最も重要なことは、光が乏しい環境下で獲物の明るい像を得ることです。それゆえ、多くのハンターにとって双眼鏡の重量と大きさは二の次なのです。
中央ヨーロッパにおけるニーズ
こうした理由から、中央ヨーロッパの狩猟における典型的な標準の双眼鏡は大きく、そして重く、ただし明るいものが一般的なのです。双眼鏡の瞳径7㎜が確保され、倍率8倍、大型の対物レンズ、これら特徴は8x56双眼鏡が狩猟目的に最適であることを証明しています。
倍率8倍は像の詳細を映し出せるだけではなく、視野も広く、光学10倍の双眼鏡よりも手持ちでの保持が簡単です。確かに双眼鏡の瞳径7㎜は我々人間の日中の瞳径よりも大きく、それが故に、この余裕のある瞳径が快適な眼視を約束するものなのです。(*通常、日中の瞳径は2-3㎜程度とされ、暗所において人間の瞳は最大で7㎜程度まで大きくなります。双眼鏡のひとみ径の求め方は、対物径÷倍率。例: 56÷8=7mm。 レンズが大きければそのぶんの”明るさ”を得ることができるわけです。)
双眼鏡の瞳径が7㎜あることで、目を正確に瞳径の真後ろに合わせる必要がないことから、手持ちによる手振れの影響(*視界が揺れる)は殆どありません。双眼鏡の特徴とは別に、視界不良な条件下において軽快なレスポンスを得るための光学品質は、依然として最も重要な要素であることは間違いありません。特に、光透過率とコントラスト、迷光などがここでは重要になります。レンズから得られる像は、その全ての詳細を余すとこなく端から端まで、まるで刃物のように鋭くあるべきです。
第一印象
ビクセンフォレスタIIを手に持った印象ですが、非常に重いです。1220gの重量があり、長さは19㎝です。このサイズはナイトハンティング、或いはオールラウンダー用として車の座席シート下にしまっておくことができる❝成熟した、あるいは大人向け❞の双眼鏡といえますが、ストーキング猟向けの軽量型双眼鏡ではありません。
本体色はブラックで、マットなラバーアーマーで覆われ触り心地は良好です。加えて、双眼鏡のラバーアーマーはたいへん握り易く、本体をダメージから保護してくれるものでもあります。フォレスタII双眼鏡は中央部に握りがあるモダンなデザインで、著者の指にも十分なスペースの余裕があり、双眼鏡外観も堅牢な作りです。
フォーカスつまみですが、著者はツマミの横側に何とか指で触れることができました。そうは言いつつも、ツマミに細かな十字溝が切られているおかげで、フォーカス調整の動きは多少きつい印象も受けましたが、滑らかでいい感じでした。その他としては、非常に低温な環境下(マイナス20度)にもかかわらず、何の問題もなく双眼鏡の操作をすることができました。
視度調整も同様にフォーカスつまみで行いますが、この場合、ツマミを引き出さなくてはなりません。視度とフォーカス両方の調整はこのツマミで可能です。水深1mに数時間のあいだ双眼鏡を浸しましたが、防水であることが証明されました。
ラバーアーマーを備えた双眼鏡の見口は4つの位置で固定が可能です。著者は眼鏡使用者ですが、仕様表にある1000m先で126mの視野角の全てを活用することは叶いませんでした。マルチコートが施されたこの双眼鏡は、実際の色にとても近しい再現性をもたらすものであり、解像度とレンズ周辺の鋭さは高く、像のイメージも明るいです。但し、コントラストについては平均といったところでしょうか。
実用性
この双眼鏡は覗くと静かに目元に収まります。ただ、もう少しフォーカス機構が簡便だったらとは感じます。夕暮れ時、著者は130m先のシカをこの双眼鏡で簡単に見つけることが出来ました。半月では、暗い茂みに潜むイノシシを確認することができました。ビクセンフォレスタIIは餌などで獲物おびき寄せておこなうKirrung猟の際もその価値を証明してくれました。ビクセンフォレスタIIは、確かにツァイス8x54 HTあるいはスワロフスキー SLC 8x56といった高級双眼鏡クラスの光学品質には届きませんが、狩猟向け双眼鏡として用いることができ、632ユーロは満足が得られる価格設定です。
ライター: Roland Zeitler