ここでは、海外で活躍をする日本の光学機器メーカーのライフルスコープ製品レビューをご紹介をさせていただきます。ここで紹介させていただくレビューは、ドイツ狩猟専門誌に掲載され、著名なドイツ人ライター様によって準備されたものが中心になります。
ドイツ語から日本語へ翻訳したテストレポートについては、ライター様から許可を頂戴したもののみを掲載させていただきますが、テストレポートの著作権(写真を含む)は全てライター様に帰属しますので、記事の2次転用はについては、直接ライター様へその許可をご確認をいただくことになります。ご注意ください。
こちらのテストレポートは、2017年10月に出版されたドイツ狩猟専門誌へ掲載されたものです。
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高価なライフルスコープを、所持する別のハンティングライフルにマウントしようとする場合、毎回いちいち設定をし直さなければなりません。面倒です。デントラーの革新的なマウントがあれば、その手間はもはや必要ありません。我々は、メルケル Helixとブレーザー R8を使い、実際にデントラーマウントがどれほど機能するのかについて、今回検証をしてみました。
ライター:Norbert Klups
用意した2挺のライフル銃のバレルは、引き金が引かれた際、それぞれ特徴的な振動を発します。仮に2挺の同一モデル、同一の口径向けに設計されたライフルでさえ、市場で流通しているカートリッジの選択もまた、人それぞれで、仮に同一のライフル銃に同一のスコープを用いたとしても、着弾点が同じになるということはありません。
仮にそのようなことが起きたとしても、それは全くの偶然です。もし、ハンターが1本のスコープを2挺のライフルに使いたい場合、ライフルスコープはその都度調整をしなければなりません。ここ最近市場に流通している高級なライフルスコープであれば、エレベーションとウィンデージのクリック数を何かに記録しておくか、各ツマミに目印を付けておくか等で対応が出来るかもしれません。
しかしながら、この方法にはシューターによる思い込みや勘違いなど、誤射につながる大きな危険性が潜んでいます。それゆえ、もしこうした方法に取り組もうとする場合、事故を避けるため、シューターには大変慎重に準備を行うことが求められますが、これは理想的な方法とは言えません。一方で、デントラーはこうした問題を"デントラーバリオ″ と呼ばれるスコープマウントで解決したいと考えています。銃に取付けるこのベースマウントは、高さと水平を調整できる独自機構を備えています。
着弾点補正は、デントラーバリオのマウント本体で直接行うことが出来ます。ユーザーは、ライフルスコープを使って調整する必要はありません。スコープ内の調整機構に触れる必要がないのです。一度ゼロインを済ませてしまえば、1挺または複数の猟銃に載せかえてライフルスコープを使うことができるのです。ベースマウントは銃器に固定され、スコープ調整をする必要もないことから、前述の操作ミスを完全に排除することができます。
デントラーマウントシステム
デントラーは2種類のベースマウント、ベイシスとバリオを用意しています。これら2種の違いですが、バリオは調整機構を備えていますが、ベイシスには調整機構が備わっていません。ベイシスの価格はバリオよりも安く、もしライフルスコープを付け替える予定がないシューター、あるいは初めてデントラーマウントを猟銃にマウントするシューターへ向けたマウントです。このベイシスマウントにおいては、スコープのウィンデージ/エレベーションを使って着弾点の調整を行います。
デントラーマウントシステムは、留め具で連結される上下2本のレールから構成されています。銃のモデルにもよりますが、下側のベースレールはネジ、又はクランプで銃器に固定します。ベースレールは、他のスコープマウントベースと同じように銃器側に受け部として残ります。ライフルスコープは上側のマウントレールへ取付けます。マウントレールには、インナーレール式、またはリング式が用意されています。上側と下側のレールを一つに合体させることで、全体として一つのマウントのように見えます。
上側のマウントレールには、下側のレールを正確に、そしてガッチリと掴むための横を向いた2つのクリート(滑り止めの爪)が付いています。クランプ固定後、前方のクリートと後方のクリートで、水平方向のアライメントを整えます。ベースレールに付いているクランプレバーを180度回転させることで、上側と下側のレールは完全にロックされます。
上側のマウントレールにあるピンが、下側レールの穴に入りロックされることで、上側のマウントレールは全ての軸方向に対し、自動的に中心で固定されます。結果として、マウントレールは常に同じ位置で固定されるというわけです。クランプレバーの締まり具合は固定ピンを時計回り、または反時計回りにまわすことで調節ができます。この固定ピンは安全ネジを締めることで完全固定されます。
1本のライフルスコープを銃に取付けたいのであれば、デントラーベイシスで十分です。ベースレールは鋼鉄製で、錆から本体を保護するため、表面にはプラズマ窒化処理*が施されています。(*金属表面の硬度、耐摩耗性を向上させる効果があります。)
もう一つのベースレールであるバリオは、1本のライフルスコープを別の猟銃にも使いたいという銃オーナーの欲求にこたえるものです。先ず初めに、1挺目の銃では通常通りにスコープのウィンデージ/エレベーションを使ってゼロインを済ませます。ベースレールにバリオを取付けた2挺目のゼロインは、バリオに内蔵されている調整機構を使い着弾点の補正を行います。この作業を終えると、銃オーナーは2挺の猟銃で1本のライフルスコープを使うことができるようになります。まったく嘘みたいな話です。
デントラーマウントシステムの検証テスト
我々はメルケル Helix に.300 Winchester Magnumキャリバーを、ブレーザー R8 に.338 Blaser Magnumキャリバーを、そしてスコープは ライカ Magnus 2.8-16x56を使って検証テストを行うことにしました。強力なキャリバーに加え、重量のあるスコープを選択した理由は、このデントラーマウントシステムに可能な限りストレスを与えるためです。
この方法は、頑丈さと射撃の再現性を評価するための手段としては良い方法です。ベースレールとして、メルケル Helixにベイシスを、ブレーザー R8にはバリオを取付けました。別の使い方として、2本のスコープを1挺の猟銃で使った場合についてもテストするため、我々はドリブンハント用のスワロフスキー Z8i 1-8x24をメルケル Helixにマウントし検証を行いました。両方のライフルスコープはインナーレール式で、マウントレールへの取付けは非常に簡単です。スコープの取付けに関し、技術的な経験値が浅いハンターであっても、デントラーであれば問題なく取付けることが出来るでしょう。
我々の場合、各銃器に下側のベースレールを取付け、ライフルスコープが付いた状態の上側マウントレールをクランプ固定するだけです。銃器からベースレールを取り外すことが無いため、ベースレールを銃器に固定するネジには、ネジロック(ミディアムで十分)を付着させて取付けることをアドバイスします。このネジロックにより、射撃を繰り返してもネジが緩むことを防止できます。ライフルスコープは素早くインナーレールで取付けることができ、アイレリーフの調整も前後に動かすことで快適に行うことが出来ました。
最後に、ユーザーは上側のマウントレールに付いているピンを時計回りにまわすことで(重く)、半時計回りへまわすことで(軽く)、クランプレバーの重さを調整することができます。調整が上手くできている状態は、クランプレバーを適度な力で快適に180度回転させることが出来る状態です。クランプレバーを最後まで回し切ると、自動的にカチッと収まり、バネが仕込まれた小さな鉄球で固定されます。最後に、ピンを固定するロックネジを締め、調整終了です。
ベイシス
我々は、ライカとスワロフスキー2本のスコープともウィンデージ/エレベーションを使いゼロインを済ませ、普段の要領でメルケルHelixを使って試射を行いました。
ベイシスは、極めて衝撃耐性の高いマウントであり、加えて射撃の再現性についても、その性能を証明しました。撮影した2枚の写真では、我々は目立った違いを見つけることは出来ませんでした。スワロフスキーのドリブンハント用であれ、ライカであれ、着弾点に何も変わりはありませんでした。スコープマウントとして、この時点でデントラーシステムはファーストクラスであることを証明し、既におすすめできるマウントです。
しかしながら、それは特別なことでも何でもありません。なぜなら、EAWやMAK、Recknageのマウントも同様に優れているからです。しかし、ライカのスコープをマウントして試射をおこなった1挺目のメルケル Helixから、ベースレールにバリオを搭載した2挺目のブレーザー R8にライカをマウントする辺りから今回の検証テストは面白くなってきます。
100mの射撃レーンにおいて、メルケル Helixからスコープを付替えたブレーザー R8での試射は、非常に良い結果が得られましたが、着弾点は的の中心から15㎝下、12㎝右という結果でした。
マウントを使ってライフルスコープを調整
ベースレールのバリオは更に上下の部品から構成されています。下の部品は銃器に固定され、2つのクリートを備えたベイシスと似ています。しかし、上の部品にはクランプレバーと傾斜機構が備わっています。
着脱については、ベイシスと同様、ライフルスコープが取付けられた上部マウントを外すだけです。クランプレバーもまた、同じ要領で調節することができます。ベイシスとバリオの違いは、高さと左右の調整が可能になっている点です。調整機能それ自体は特に目新しいものではなく、シングルフックマウントやスイベル式マウントにも似たような機能を持った製品はあります。
しかしながら、これらは左右の調整にのみに限定されています。デントラーバリオには、更に高さを調整することが可能な機構が組み込まれています。この機構を備えていることで、ライフルスコープ内にあるウィンデージやエレベーションといった調整を使うことなく、マウントで着弾点の補正を行うことが出来るのです。この調整幅は、100m先で左右150㎝、下方向に50㎝、上方向に200㎝とされています。この調整幅であれば多くの場合においてで十分です。
もちろん、この調整はライフルスコープを使って行うクリック式の調整と同じように単純というわけではなく、多少の器用さも要求されます。バリオは、ベイシスよりも2.5㎜高く組み立てられています。我々は、まず初めに水平の着弾点補正を行いました。右方向への12㎝の補正には、右側の調整ネジを緩めたあと、左側の調整ネジを締めました(* ”押し” と”引き” のネジ構造になっています)。
すると、ライフルスコープが取付けられている上部ユニットが水平方向に動きます。その後、ユーザーは右側の調整ネジを再度しっかりと締めることで、左右2本のネジで固定されます。2発の試射が示していますが、銃はまだ右に6㎝程度の補正が必要です。そこで、更に前述の調整を繰り返します。次の試射では、調整ネジを少し回しすぎてしまい、着弾点は左へ3㎝という結果でした。
最後に左側のネジ調整を終え、試射をおこなったところ、水平方向は完璧になりました。我々は最後に右側の調整ネジをギュッと締め上げました。4ニュートンメーター(4Nm)です。これは手でギュッと締め上げる程度の力です。
いよいよバリオを使った高さ調整です。高さ調整は、バリオに組込まれた偏心ネジを使って行います。ロックネジで固定されているため、先ずはこのロックネジを緩めます。下方向への着弾点補正には、偏心ネジを反時計回りにまわします。調整後の試射、なぜか2発とも未だ5㎝下方向へ着弾です。4㎝上方向へ着弾させるため、もう少し偏心ネジを回したところ、着弾点が変わり、狙い通りの4㎝上へ着弾しました。
たまにはラッキーも必要です。最後にロックネジを固定したところで、猟銃のセッティングは完璧です。さっそくメルケル Helixへのライフルスコープ付け替えたところ、結果はパーフェクトショット。これは驚くべき体験でした。なぜなら、ライフルスコープの設定には一切触れておらず、スコープがマウントされている上部ユニットにさえ触れていないのです。ライカのライフルスコープは、これで2挺の猟銃で使えるようになりました。
結論
今回のテストで得られた結果は、デントラーマウントシステムは本当に上手く機能するということです。バリオマウントがあれば、あなたは自分自身でライフルスコープの着脱ができます。更に言ってしまえば、バリオを追加で取付けることで、3挺目の猟銃にスコープを載せかえることもできるでしょう。
このベイシスは109ユーロ、バリオは399ユーロです。上部ユニットはインナーレール式、リング式ともに250ユーロです。ベイシスと上部マウントレールのコンプリートセットは359ユーロであり、従来型のスイベル式マウントと同じような価格帯です。更に399ユーロでバリオを追加すれば、2本目のライフルスコープを購入せずに済みます。こうすることで、新たにライカのスコープを購入することを思えば、正味1000ユーロを超える支出の節約をすぐにできます。
一体型の鋼鉄製ベースであるが故、デントラーは非常に頑丈であり、かつ、幾度も繰り返して使用することができることを検証テストでは証明されました。
銃に使う弾薬を別のタイプに切り替える場合、または弾薬を新しいバッチに取り替えるなど、ライフルスコープ上のレチクル位置を修正する必要がある場合には、必ずバリオを装備した2挺目の銃で再び試射をする必要があり、もちろん、ベイシスについても同様の手順が求められます。ベースレールは、多くの武器モデル(70種類以上)に対応しています。上部のマウントレールは、レッドドット・サイト用などの特殊なマウントレールを含め、すべてのインナーレイルシステムとリングサイズに対応しています。
日本語翻訳完了いたしました。