ビクセン 2.8-15x56 ライフルスコープ 照明付きレチクル German 4
手が届く価格帯の日本製、高精度ライフルスコープ
レビューワー:ピート・キンケード(豪州)
ライフルスコープにはTPSの 30mmマウントリング(こちらは個別のレビューに値する製品です)が付属していました。このマウントリングはスチール製の1913ピカティニーレールに取り付けられていました。テストに用いたライフル銃は、Tikka T3xに308ウィンチェスターという組み合わせです。このライフルスコープの光学品質については、ディオプターを調整した瞬間に明らかになりました。
私がライフルスコープのレビューを依頼された時、Vixenというオーストラリア市場へは新規参入のブランド、正直に言うと、私はこれまでこのブランド名を聞いたことが無かったということは認めざるを得ません。豪州Distributorを務めるC.R Kennedyは1934年にメルボルンに設立され、高品質の光学技術製品を医療分野、公共事業、セキュリティー、その他の市場へ流通させていることで有名な企業です。彼らはこれら製品群とは別に、銃火器、双眼鏡、ライフルスコープ等を豪州へ輸入し、国内で流通させています。この家族経営の豪州企業に関する成功の歴史は説明するまでもなく、敢えて言うとするならば、彼らには高品質製品群とそのプレミアムサービスで長きに渡り築き上げてきた高い評判があります。
ゆえに、C.R.Kennedy社がVixenブランドのライフルスコープの取扱いをオーストラリアとニュージーランドで始めたことについては驚くことではありません。これら2つの企業をたとえるなら、細部へのこだわり、品質、販売後の献身的なサービス、これらと同義といっても過言ではありません。Vixenは今回の評価実施を行う前まで、私にとって無名ブランドであったことから、私は幾つかのリサーチを行いました。彼らが日本を拠点とするメーカーであること、天体望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、その他アクセサリーの輸出企業であるとともに、産業向けおよびコンシューマー向けの市場へ向け幅広くターゲットを持っているということがわかりました。これはライフルスコープのレビューですので、Vixenという企業について先ず彼らの歴史について説明をさせてください。彼らの歴史を理解することで、Vixenが日本製、精密光学機器、そしてプレミアムな技術製品の製造企業であることがすぐに明らかになることでしょう(会社説明については以下英語原文PDFにて詳細)。
テストプラットフォームはその性能が既に証明されている製品のパッケージで構成されていました。Tikka T3x(.308ウィンチェスター)、スチール製ピカティニーレール、ハリス製バイポッド、TABのバットバッグ、150グレインのSako Super Hammerhead カートリッジ。米国製のTABマウントリングが付属していましたが、こちらも大変印象的な製品でした。
あらゆる側面からの性能評価をするため、Vixen 2.8-15x56はすべてのパラメーターが既に証明されているライフルプラットフォームにマウントされ、唯一の変更はこの評価用スコープを付け替えたという点のみです。Tikka T3xはシカの捕獲、イノシシの駆除などで活躍する仕事用のライフルです。ハリス社のバイポッドとTAB社のバットバッグの組み合わせは獲物をじっくりと狙うような計算された射撃が重要になる場面でその価値を何度も証明してくれています。Sako社の150グレイン Super Hammerheadは狩猟用のプレミアムなファクトリーローディング弾であり、加えてリローディング用としても優れた真鍮製というベネフィットもあります。
ウィンデージとエレベーション調整の精度を確かめる際、競技用途の認証を受けたコンクリートBenchをテストプラットフォームに用いることを私は好みます。幸運なことに、地元ライフルクラブにはそうしたBenchが施設内に用意されていることから、私はしばしば彼らの施設を利用させてもらっています。ライフルスコープを私の銃にマウントする前に、私はマウントリングを箱から取り出しました。2つの製品は地味に梱包されていたため、内容物の品質と性能も同様に地味なのかもしれないと勝手に想像をしてしまいましたが、実際は異なりました。
Vixenライフルスコープが高品質な光学製品であることを示す最初のヒントは視度調整でした。私は全てのライフル銃用の光学機器を射撃ベンチ、屋外など、気が散らない場所で自分で調整をしますが、Vixenライフルスコープも例外ではありません。ピカティニーレール上のマウントリングの前後位置を決めたのち、トルクレンチでベースリングを固定し、その上にスコープ、トップリングを載せてアイレリーフをセットしていきます。
私の場合、接眼部のディオプター調整を先ず行いますが、Vixenの優れた光学品質をはじめに感じさせたのはこの調整でした。ディオプターのフォーカスと、側面のパララックス補正の相互作用で、ガラスに刻まれたGerman 4レチクルはメスのように鋭くなりました。これはテレスコーピックサイトでは必ずしもこうはならず、私が初めてスコープのゼロインを行った当時、経験するであろうことは予告されていたことを覚えています。
レビュー用のスコープは、ピカティニーレールの上にTPS社の30㎜“High”マウントリングを載せて取り付けられました。私はこのマウントリングに非常に感銘を受けたことから、この先、ロングレンジ精密射撃においてレビューをさせてもらう機会があることを期待しています。
CR2032リチウム電池(イルミ付きライフルスコープ、ハンドガン用のリフレックスドットサイトでは標準)を入れたのち、私は距離50メートルでボアサイトを済ませ、1発試射を行いました。着弾点を確認後、ウィンデージとエレベーションを調整する際、ターレットのクリック感とスムーズかつ高い精度に気付きました。続けて2発目を試射し再び調整、各エレベーションとウィンデージのゼロインを済ませ、私の関心は距離100メートル先のターゲットです。距離100メートルでの射撃では、ダイアモンド サイトイン ターゲット中心の50㎜下、15mm左に着弾しました。計算をし、エレベーションのみの調整を行い、改めて試射をしたところ、弾は的の中心から15mm上、25㎜左に着弾をしました。
再び調整することよりもむしろ、私は2発続けて試射をしたところ、その両着弾点はともに近く、少しだけ高く、左寄りでした。結果ですか?距離100メートルで20㎜のグルーピングです。私はウィンデージを右方向へ4クリック、下方向へ1クリック動かし、ターゲットを新しいものに変え、再び距離100メートルに臨みます。
次のターゲットは、ゼロイン位置への反復精度を試すテストです(エレベーションだけではなく、ウィンデージの両方です)。私のテスト手法は、ゼロイン位置で射撃を行い、そこからターレット調整ツマミを何回も上下前後に動かし、反復精度の一貫性に瑕疵を見つけることを目的としたものです。74発を試射したあと、私はこれ以上ライフル銃の喉を酷使することはやめようと思い、このVixenライフルスコープは100%安定していることに加え、私の努力も実り、ウィンデージ及びエレベーションにトラックエラーが無いということが証明されました。
最初のゼロイン調整は距離100メートルで実施しました。1発目は下方向、少し左側へ着弾、垂直方向の調整前に3発のグルーピングを実施。ターレットの調整精度は、上代1500豪ドルのスコープとは思えない内容でした。ウィンデージとエレベーション調整の安定性については、その後のテストで何度も繰り返し確認をしました。
ターレットキャップを取り外すと、エレベーションとウィンデージターレットが現れ、ゼロ位置の印が刻まれています。POA調整が済んだ状態で、ツマミを単純に引き上げ、回転させゼロ位置へ合わせてからツマミを押し戻すという一連の動きです。
距離100メートルのターゲットです。ターゲットまでの距離と風の両方をシュミレートするためのウィンデージとエレベーション調整の参考例です。
上の写真では、1発目(中心から左)はゼロ位置(中心のダイヤ)から左方向へ11クリック移動させた結果です。2発目(中心ダイヤの上)は、ウィンデージを右方向へ11クリック、上方向へ7クリック移動させたのち、ほとんど完璧にゼロイン調整が整いました。前回の射撃よりも上達したいという願いは常に持ち続けていますが、3発目かつ最後の射撃では、左方向へ1クリック、上方向に15クリック移動させました。3発目の着弾点は調整の通りの結果となりました。もし私がエゴに屈していなければ、この着弾点は中心の真ん中だったことでしょう。私は、この一貫性を繰り返し反復することができましたが、最終テストの前までに今一度、私が騙されやすい人間ではないことをVixenスコープに知らしめるため、私は敢えてターレットを最上限から最下限まで、最右限から最左限まで60分をかけて往復させることにしました。このテストを実行する際、私はこのライフルスコープを壊してしまうかもしれないということ、仮に壊してしまった場合はどうやってC.R.Kennedy社へそれを説明したら良いだろうかという恐れを感じていたことを私はここに認めます。
距離200メートルにおけるターレット精度及び安定性のテスト。注意;このテストは1時間に及ぶ手動によるターレットのFull-Up/Full-Down, Full-Right/Full-Leftの後に実施しました。
最終テストを前に、Tikkaのバレルを綺麗に清掃し、カーボン(すす)とカッパー(銅)を取り除く作業を終える頃には、雲のない空に午後の太陽が輝き、首の後ろにはほとんど気が付かないほどの風が吹き、この最終テストには最適な状況でした。今回の射撃距離は200メートルだったため、射撃前に私はエレベーションを数クリック回し、呼吸を整え、狙いを定め、サイター(下のオレンジ色の円)へ向け2発射撃しました。2発は35㎜、40㎜下に着弾し、ウィンデージにズレはありませんでした。150グレイン Sako Super Hammerheads は本来あるべき位置にグルーピングされていました。これはエレベーションを十分に上げなかった私の責任であって、Vixenのスコープのせいではありません。しだいに雲がかかってきたため、私は通り雨か、或いは夜には天気が崩れるかもしれないと感じ取りました。今回、1日に2度もエゴにはけてはらないと思い、ウィンデージには触れず、エレベーションを5クリック回したあと2発射撃しました。
2発は予測したよりも70㎜上に着弾しました。しかしながら、風がちょうど左から右へ吹き始めたため、テスト条件が時間を待たずに悪化していくことを懸念しました。最後に、私はエレベーションを8クリック調整し、ハリスバイポッドが銃の先台に固く固定されていること、そしてバットに緩みがないことを確認しました。私は最後にTAB Gearバットバッグをギュッと絞ったあと、Vixenスコープのセンタードットを下り距離200メートル先の小さなオレンジ色のディスク中心に合わせ、同時に、やがて訪れるであろう左右から吹く風が止まる瞬間を待ちながら、ついに訪れたそのとき、引き金を引く。私はTikkaのトリガーを引くと、軽量なハンティングツールは射撃ベンチで揺れました。息をつく間もないうちに、私は一瞬視界を失いましたが、フォロースルーが見え、弾丸の穴は200メートル先にあるオレンジ色ディスクの25㎜内側に着弾していました。
質問:Vixen 2.8-15x56ライフルスコープは、どれほどシャープでクリアな見え味ですか?
この重要な質問に対しては、幾つかの側面からお答えしましょう。
全ての光学機器は、光の波長を我々の脳が受信できるようなフォームに変換します。その加工プロセスは、光を目で見みることができる像に変換し、それを脳で解読、光そのものだけでなく、光がどのようにして捉えられ、解釈され、保存され、測定されるかを物理的・幾何学的に研究し、そして理解する科学です。如何なる優れた光学製品であったとしても、必ずある程度の色収差は発生します。
天体望遠鏡、カメラ、双眼鏡、あるいはライフルスコープを使用し近くや遠くの対象物を見る際、変倍または固定倍率において、収差は色の歪み、ぼやけた感じ、視野外郭のモヤ、その他の鮮明さの違いとして我々の目に映ります。収差は機械的な欠陥ではなく、レンズやプリズムの形状とその配置、ライフルスコープを覗いたときの光源と見え方といった光学的な要素に起因するものであることを理解しておく必要があります。
プレミアムな光学機器メーカーは、収差を軽減するためにその多くの時間とコストをリサーチと開発へ投資しています。ガラス形成、レンズコート、その他の光透過率に影響を与える要素は最適なパフォーマンスが発揮されるように恒常的に修正改善されています。私は自身のライフルスコープと双眼鏡がプレミアムな品質であることや、お買い得品から最高級品までの様々なメーカーのライフルスコープや双眼鏡を定期的にレビューできることを幸運だと感じます。私の経験では品質と価格は常にともにありますが、このVixen 2.8-15x56ライフルスコープに至っては異常です。これは上代1500豪ドルのライフルスコープかつ、ハンターが必要な機能を全て備えている製品です。このスコープは、通常2倍の上代価格のスコープに見られるような低収差、低色収差を実現しています。加えて、ガラスエッチングされたGerman 4に照明付きのセンタードットレチクルです。German 4レチクルとは、水平方向の外側と垂直下方向へ向けて太い線を有し、中心は細いクロスヘアを組み合わされたものです。レッドドットがスイッチONされている状態、又はOFFの場合でも、このレチクルはドリブンハントといった低倍率を用いる状況や、多少距離のある邪魔の入らない高倍率を用いるハンティングなど、何れのシーンにもピッタリのレチクルです。
私がこのライフルスコープの性能評価を行った初日の日中と夕暮れ時、私はこのライフルスコープは、光が届きにくい森の中でイノシシや鹿を狙うドイツ人ハンター向けに設計された製品なのではないかと考えずにはいられませんでした。56㎜の対物レンズはハンターが光が届きにくい暗い環境へ踏み入れる際の採光メリットが大きく、レッドドットもダイヤルを下げ減光することで環境への適応も完璧です。オーストラリア人のディアハンティングにおいては、このスコープは価格的に優れているだけではなく、必要な機能を全て備えています。
Vixenライフルスコープについて私が考える結論は、ハンターが狙う遠い距離の獲物を人道的に撃ち抜くためのアシストをすることができる、それがこの銃の最大の特徴です。これを可能にしているのは、非常に精度が高く、かつ一貫性とゼロリセットとキャップを備えたターレットシステムの組み合わせです。光学的には、ガラスは透明性と明るさに加え、本来この価格帯ではなく高価格帯製品でみられる低収差です。自身をライフルハンターと呼ぶ全ての男性女性は、弾の着弾点に加え、カートリッジの弾道落下と弾道性能を知っている必要があります。このような知識がなければ、確実かつ、人道的な獲物の処理は保証されません。Vixen 2.8-15x56ライフルスコープは、パララックス補正に加え、弾道落下及び風向き補正を行うための高精度ターレット、非常にクリアでシャープな見えをハンターに提供します。223 Remington, 300 Winchester Magnum, あるいは貴方が好む如何なるロングレンジ向けハンティングライフル用の弾であれ、Vixen 2.8-15x56ライフルスコープは照明付きGerman 4レチクルを搭載し、日本製の第2焦点面の非常に価値の高いハンティングライフルスコープです。
レビューワー:ピート・キンケード