頑丈な日本製
日本光学機器メーカーから発表された興味深いライフルスコープは、ほとんど全ての狩猟用途を満たす仕様になっています。加えて価格設定も魅力的です。
ライター: Norbert Klups
倍率比はビクセンが50㎜口径に用いている6倍比には正確には対応していませんが、恐らくこれは最適化された光学設計に起因していると想像します。しかしながら、56㎜口径では今のところ4倍比のみです。今回、最も興味深いイノベーションは、照明装置が後方の接眼部ではなく、ライフルスコープの左側面に配置された点です。いまのところ、この仕様はこのドリブンハント向け新型Vixen スコープにのみ採用されています。
この新型56㎜ライフルスコープでは、レチクルの照明装置とパララックス補正機構が一つのタレットに統合され最適化されています。これが意味することは、ビクセンが狩猟という領域において、モダンでありながらも、万能用途なライフルスコープを自社の製品群に揃えたということです。上代1199ユーロは、非常に魅力的な価格設定です。
接眼部の前方にある倍率調節リングにはリブが刻まれているため握り易く、半回転で倍率全域をカバーしています。5倍と6倍の間に小さな突起があります。ディオプターはいつも通り素早く調整が可能です。調整幅は+/- 3 dpt です。
アイレリーフは99mmと十分です。接眼部端には柔らかなゴム製のパッドが付いています。レチクル調整ははっきりと聞こえるクリック音に加え、100m先での着弾点を7㎜単位で変えることができます。調整ツマミにはラベルが貼付されており、そのツマミは工具を必要とせずに操作が可能です。
レチクル位置のゼロリセットも簡単です。タレットを引き上げ、任意の位置で押し込めば完了です。チューブ径は30㎜です。ワンピースのアルミニウムチューブ本体は黒色にアノダイズ加工されています。ビクセンは防水及び防塵加工が施され、内部曇り防止のためニトロゲンガスが充填されています。
テストに用いたライフルスコープは水深50㎝の深さに3時間浸し、防水加工が施されていることを確認しました。マイナス18℃のフリーザーに数時間放置しましたが問題は無く、その後、屋内の室温環境へ放り込んでもライフルスコープ内部が曇ることはありませんでした。
スコープ長さ373㎜は56㎜径ライフルスコープとしては一般的な範囲以内の大きさです。一方で、785グラムの重量については重い部類に入ります。スワロフスキー 2.5-15x56は100グラム軽量の685グラムです。メオプタ 2.5-15x56は更に軽量な650グラムです。
対物レンズが収まったバレル外径を計測すれば一目瞭然ですが、この理由は、かなり大きなチューブ本体構造にあるかもしれません。例えば、スワロフスキー 2.5-15x56を例にとると、外径が62㎜に対し、ビクセンのそれは65㎜です。
背の低いスコープマウントの場合、もちろんこのサイズは不利ですが、クランプアダプターでナイトビジョンを取り付けるとした場合、頑丈に作られたスコープは断然有利です。クランプ時の力が光学系に与える影響を過小評価するべきではありません。最少倍率時における13.4mのFOVはハイシート猟には十分です。しかしながら、トップブランドのFOVとは競争になりません。ツァイス V8-2.8-20x56 は2.8倍時においてFOV 15.5mです。
レチクル照明とパララックス補正機構
レチクルの照明装置はチューブ中央の左側面に配置され、パララックス補正機構はその内側に備わっています。照明装置は11段階の調節ができ、このツマミは両方向へ回すことができます。つまり、ゼロ位置にツマミがある場合、最小輝度と最大輝度の切換が即時に可能です。
イルミネーションドットはコントローラーがオンになっている時にのみ点灯します。点灯のON/OFF位置は交互に配置されています。ハイシート猟ではとても実用的な仕様です。適切な照明をセットしておき、その前後のどちらかに半ステップ回転するだけで電源のON/OFFが可能です。
この新型ビクセンはG4レチクルのみが準備されています(*2021年8月時点ではBDC10レチクルも有り)。このレチクルはジャーマンレチクル4にレッドドットが付いたものです。レッドドットの輝度は、ハンティングにおける様々な状況をカバーが可能な内容です。レチクルは最低輝度設定でも視認することができ、照明が強すぎるといったことはありません。
一方、照明輝度設定の高輝度レベルでは、レッドドットの狙点は十分に明るく、日中の太陽光下においても直ぐにはっきりと視認することができます。パララックス補正幅は距離15メートルから無限遠です。足りないと感じる仕様にといえば距離100メートルにおけるゼロストップでしょうか。パララックス補正機構はパララックスエラー状態を回避することに加え、スコープの見え味もほんの少し鋭くします。ナイトビジョンと併せて使用する場合、特に接眼部へ取り付けるタイプのナイトビジョンにおいてこの点は大変重要です。パララックス補正機能が備わっていない場合、フォーカスを合わせることは極めて困難な作業になります。
ラボラトリーテスト&猟区
対物レンズ56㎜径のライフルスコープとしては、光透過率は大変興味深い数値です。夜間時においては光透過率89.9%、日中のその数値は91.8%と、このビクセン ライフルスコープはかなり印象的です。
ラボラトリーにて、サイトラインを測定しました。第2焦点面にレチクルを備えたライフルスコープでは、その特徴として倍率を変える際にサイトラインに偏差が見られることは広く知られています。これは業界トップのメーカーにも言えることです。ビクセンのこのスコープについては、全調整域において2.4センチの偏差(サイトラインのズレ)が計測されました。この数値は一般的な許容の範囲以内であり、狩猟における実用途では大きな影響はありません。
ライフルスコープのテストにはMerkel Helixに.30-06スプリングフィールド弾を用いました。スコープはデントラーにマウントしました。レチクル調整は良いリピータビィティーを示し、信頼性も高い内容でした。着弾点は1クリックで7㎜の調整が可能です。レチクルの最大調整幅は+/- 25MOAです。
センターチューブには十分な長さがあるため、仮に大型のマウントシステムスへのマウントにも問題はありません。ライフルスコープは背後からの陽光状況においても大変良い内容でした。このビクセンのスコープは優れていますが、一方でトップブランドとの違いは明確でもあります。この点はレンズ周辺の鋭さや、色味の再現性などです。
しかしながら、この価格帯のライフルスコープに再酔いされている日本メーカーのコーティング技術は目覚ましいものです。もし貴方が更に見えの良いスコープを望むのであれば、更に追加で1000ユーロあるいはそれ以上の予算準備が必要です。全ての操作はスムーズに機能し、銃を構えた状態でも容易な操作が可能です。
マトメ
Vixen 2.8-15x56では、ビクセンは魅力的な価格設定とともに万能かつ多機能なライフルスコープを市場投入してきました。レチクル照明をパララックス補正機構と同じ左側に配した点は大変便利なものです。さらに、頑丈な機構はユーザーのアッタチメントヘの関心に沿ったものです。素晴らしく価格とパフォーマンスのバランスが取れた中級価格帯のライフルスコープです。
ライター: Norbert Klups